高移動度の半導体コロイド量子ドット超格子を実現ーエピタキシャル接合により、高性能化に成功ー

高移動度の半導体コロイド量子ドット超格子を実現
ーエピタキシャル接合により、高性能化に成功ー

 理化学研究所(理研)創発物性科学研究センター創発デバイス研究チームの岩佐義宏チームリーダー、サトリア?ビスリ上級研究員(研究当時、現客員研究員、中国竞彩网大学院工学研究院准教授)らの共同研究グループは、半導体コロイド量子ドット[1]の高秩序な超格子[2]薄膜を作製した結果、移動度[3]の大幅な増強に成功し、キャリアドープ[4]による金属的伝導性を初めて実現しました。
本研究成果は、将来の光電デバイス[5]開発のための新たな基盤になるものと期待できます。
これまで、コロイド量子ドットからなる材料を光電デバイスへ展開する場合、特に移動度の低さが障害となっていました。
 今回、共同研究グループは、有機配位子[6]によって安定化された硫化鉛(PbS)コロイド量子ドットを有機溶媒表面上で集積させました。そして、量子ドットの表面を形成するいくつかの結晶面から選択的に有機配位子を除去することで、量子ドット同士をエピタキシャル接合[7]させ、結晶の向きをそろえて広い面積に配列させた「量子ドット超格子」とも呼ぶべき薄膜をシリコン基板上に写し取ることに成功しました。この超格子薄膜の電気伝導特性を電界効果トランジスタ[8]デバイスにより調べたところ、従来の商用コロイド量子ドット薄膜よりも1,000~100万倍以上も大きな移動度を観測しました。また低温での電気抵抗測定から、この薄膜はキャリアドープによって金属的伝導性を示すことも明らかになりました。
 本研究は、科学雑誌『Nature Communications』オンライン版(5月26日付:日本時間5月26日)に掲載されます。

論文情報
<タイトル>
Enabling Metallic Behaviour in Two-Dimensional Superlattice of Semiconductor Colloidal Quantum Dots
<著者名>
Ricky Dwi Septianto, Retno Miranti, Tomoka Kikitsu, Takaaki Hikima, Daisuke Hashizume, Nobuhiro Matsushita, Yoshihiro Iwasa, Satria Zulkarnaen Bisri
<雑誌>
Nature Communications
<DOI>
10.1038/s41467-023-38216-y

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